スノーボードを滑りやすくするために、フッ素入りの滑走ワックスを塗ったりしますよね。
けれども、以前からフッ素化合物は環境や人体に影響があるとして問題視され、2020年10月9日に国際スキー連盟(FIS)より2021-2022シーズンFISの大会での使用禁止が発表されました。
筆者は「自然の恩恵を受けている、いちスノーボーダーとして自分にできることはないか」と考え、現在はフッ素入りワックスを使わずベースワックスのみで滑走しています。
ベースワックスだけでも滑ることができるの?
結論を言いますと筆者のように大会やレース競技を目的とせず、ゲレンデ内をクルージング気分で楽しむスノーボードなら問題ありません。
けれども、気持ちよく滑るためにはスノーボード本体のメンテナンスが必要です。
そこで今回は筆者が実際に行っている、スノーボード本体の滑走性をあげてベースワックスのみでシーズンをのりきった方法を紹介します。
この方法でスキー場の非圧雪コースや気温が高い日の緩斜面を経験しましたが、以下のポイントをおさえれば滑走性は十分満足できましたよ。
また今回、紹介する内容は以下の方に参考になります。
- 大会や競技には参加しない方
- ワックスを塗るのが面倒で手間を少しでも省きたい方
- 環境問題に対して考えていきたい方
使用したベースワックスについて
使用しているベースワックスは、普段お世話になっているショップと原料メーカーとが独自に作っているワックスでモニターという形で使わせてもらっています。
とはいっても、性能は一般に販売されているパラフィン系のベースワックスとほぼ変わりはありません。
特徴としては、少し柔らかめでボードに浸透しやすいものです。
スノーボードが滑らない原因
雪の上をボードで滑ると雪面とソールに摩擦抵抗がうまれ、その抵抗が大きくなると滑らなくなります。
ここでは摩擦抵抗が大きくなる要因について解説していきます。
水との摩擦抵抗
ボードが滑る原理は雪面と接触した時の摩擦熱で雪が解け水滴になり、その水滴がローラーの役割となってボードが滑っていきます。
けれども、撥水の限界を超え水滴がたまった状態になると、摩擦抵抗が大きくなりすぎて滑らなくなってしまいます。
春雪でよく滑らなくなる原因は、ソールの水滴が抜けきれないからなんですね。
外気温が高く雪面がすでに解けている状態(極端に言えば水たまり)の上を滑るので、よりいっそう摩擦抵抗が大きくなります。
フッ素は水をよせつけない撥水性があるため、どんどん水滴を作っていき抵抗を逃がしてくれるので、フッ素ワックスでコーティングすると滑走性がよくなります。
なので、フッ素とウインタースポーツは切っても切れない関係であるため長年使用されてきたわけです。
スノーボード本体の状態が悪い
スノーボードのソールは通常、ポリエチレンという素材で作られています。
表面を拡大すると凹凸があり、ささくれのように毛羽立ちがあります。
ソールの表面が荒い状態だと、雪面との引っかかりができボードが走りにくくなります。
これは大げさに言えば、おろし金で雪面を削りながら滑っているようなものです。
なので毛羽立ちを取ってワックスで表面をコーティングし、なめらかな状態にしてあげる必要があります。
それともうひとつ、エッジの状態にも注意しなければいけません。
滑走中はソールの真ん中はほぼ使わず、トゥーサイドかヒールサイドのどちらかのエッジに常に乗っています。
その証拠に、ソールの表面はエッジ付近だけが毛羽立ちがひどくなり白くなりますよね。
エッジは滑走を繰り返すことで、包丁の刃こぼれと同じようにがたがたになっていきます。
エッジも定期的に研いであげる必要があり、切れ味が復活すると雪面をサクサクと切りながらスムーズに滑れるわけです。
ベースワックスのみで滑るには、スノーボード本体のメンテナンスが必要です
ここから本題のフッ素を使わずベースワックスのみで滑走するために、筆者が行った対策内容と具体策について紹介していきます。
対策内容 | 具体策 |
ワックスをかけやすい表面にする | シーズン前にショップでフルチューンする |
ソールの水はけをよくする | ソールにストラクチャーを入れる |
ソール表面をなめらかにする | ホットワックスの塗る間隔を決める |
エッジのがたつきをなくす | 引っかかりがあればやすり・サビ取り消しゴムでバリを取る |
シーズン前に専門店でフルチューンする
ソールに毛羽立ちがある状態でホットワックスを塗っても、毛羽が倒れて表面をふさいでしまいワックスが内部まで浸透しません。
また人それぞれ乗り癖があって、ソールの一部分の削れ具合が大きくなっていきます。
スクレーパーをかけていて、ある箇所だけワックスが残ってしまうことはありませんか?
それはソール面がゆがんでいるのが原因です。
このような問題は、チューンナップ専門店でフルチューンを依頼することで次のように改善できます。
ソールにストラクチャーを入れる
ストラクチャーとはソールに細い線状の溝をつけていくことです。
この加工をすることで、タイヤの溝と同じで水の流れを通りやすくする効果があります。
ストラクチャーの入れ方にはいくつか種類がありますが、筆者は「クロスストラクチャー」と呼ばれる入れ方を選択しました。
フリーライドをする方にはクロスストラクチャーがおすすめですね。
加工をするにはそれなりのコストが必要で、筆者の場合は8千円かかりました。
というのも、ストラクチャーをきれいに入れるにはソールを一度リフレッシュさせることが必要で、そのためのチューンナップ代が含まれてきます。
ホットワックスの塗る間隔を決める
スノーボードの毛羽立ちを抑え表面を常になめらかな状態にするためにも、定期的にホットワックスを塗ることが必要です。
ワックスを毎回滑るごとに塗るのも大変ですしコストもかかるので、筆者は次のことを理由に『最低3日に1回』はホットワックスを塗ることに決めました。
ワックスのはがれ具合は、日ごとの雪のコンディションや使用したワックスの硬さによっても変わってきます。
なので滑り終えたあとに、次の方法でワックスの残り具合をチェックしてみてくださいね。
トゥーサイドかヒールサイド近くを、爪でスッとなぞって筋がついたら、まだワックスは残っています。
エッジのバリを取る
エッジにバリが出ていると雪面との抵抗が大きくなります。
また、ボードを持った時にバリで手を怪我することもありますので、定期的にメンテナンスする必要があります。
エッジが欠けてしまっているなど、自分では対処できないひどい状態の場合はショップでメンテナンスしてもらいましょう。
フッ素入りワックスは今後どうなるか
2021-2022シーズンFISの大会ではフッ素入りワックスの使用を禁止すると発表されました。【2020年10月9日:国際スキー連盟(FIS)理事会より】
フッ素化合物は自然環境の中で分解されにくい物質で、草木や川に浸透し家畜や魚へとつながり最終的には人間の体内へと蓄積されていきます。
またその影響には発がん性や発達障害があるとされています。
このように環境や人体に影響がある物質のため、フッ素ワックスの使用を全面で禁止にする方向に進んでいます。
現時点でワックスメーカーでもあるハヤシワックスからは、FIS大会専用のフッ素フリーワックスが開発されています。
このように滑走性が従来と変わらないノンフッ素ワックスの開発が進んでいけば、今後フッ素入りワックスの販売自体がなくなっていくのではないでしょうか。
フッ素配合ワックスであっても、環境への負荷が少ない低フッ素(C6以下のフッ素化合物)のワックスが販売されています。以前に使用したことがありますが、滑走性能は十分でした。
まとめ
ここまでフッ素入りワックスの環境問題に対応するために、ボード本体をメンテナンスしてシーズンをベースワックスだけで滑る方法を紹介してきました。
メンテナンスのポイントは以下のとおりです。
- フルチューンをしてワックスが浸透しやすくかけやすい表面にする
- ソールにストラクチャーを入れて水はけをよくする
- ホットワックスを定期的に塗り表面をなめらかにしておく
- エッジのバリを取り雪面との抵抗を軽減する
スノーボードと自然は切っても切れない関係です。
未来の子供たちのためにも、今ある環境を少しでもいい状態で残していきたいですね。